成人式に振袖を着た思い出

おじいちゃんに見せたかった晴れ姿

2020年12月17日 16時42分



今から20年近く前になりますが、地元の成人式に参加してきました。
中学校卒業以来ずっと会っていなかった同級生がほとんどなので、当日は久しぶりに会う人達ばかりで緊張したのを覚えています。
その日の私の振袖の色は鮮やかな赤。私の中でなぜか成人式の振袖は赤のイメージが強く、自分も絶対着たいと思っていました。

レンタル店でも赤にばかり目が行き、他の色も試したのですがしっくりこず結局当初からの希望通りになりました。
そして当日会場に行ってみると、なんと赤の振袖の多いこと!!あちらこちらに赤を着ている人がいます。
出身小学校ごとに集合写真を撮ったのですが、女の子の3分の1くらいは赤です。
そしてみんな白のファーを巻いています。当時流行っていたのでしょうか。
そんな驚きもありつつ楽しんだ成人式でしたが、私にはその日もうひとつやりたい事がありました。

当時一緒に住んでいた私の祖父が癌で入院中だったのですが、どうしても祖父にも振袖姿を見せたかったのです。
成人式後にいったん帰宅し、実家近くの祖父の居る病院へ向かいました。
癌自体かなり進行していて寝たきりの状態でしたが、まだかすかに意志疎通は出来ました。
私は急いで病室に向かい、おじいちゃん!今日は成人式だったから振袖見せに来たよ、と声をかけました。
すると祖父は私の方を見て何か口をモゴモゴさせました。
その時一緒にそばに居た私の母から後で聞いたのですが、なんだわざわざ来たのか、と言うような事を言っていたようです。
祖父は頑固で昔気質の人だったので、照れ隠しでそんな言葉を発したのだと思います。

しばらく病室で過ごして、帰り際にベットに横になっている祖父と写真を撮ってきました。
それからは一進一退の状態が続き、結局成人式から2ヵ月後くらいに亡くなってしまいました。
私自身、生まれてからずっと一緒に住んでいた家族が亡くなるのは初めての経験で、ただただ悲しくて悲しくて、先は長くないとわかってはいたけれど、
どういう風に気持ちの整理をつけたら良いのかわかりませんでした。
撮った写真もなかなか現像出来ずにいたのですが、ある時ふと思い出して現像してみました。

そこには祖父に寄り添い笑顔の振袖姿の私と、病でぼーっとしてしまってはいたけれど、私が来た事はきちんと認識してくれていた祖父が、穏やかな表情で写っていました。
成人式後に振袖で病室に行くなんて、どうなんだろうと迷う気持ちもあったのですが、あれから20年近く経った今でもとても良い思い出で、
見せてあげられて良かったなぁと心から思います。
友人達との楽しい時間だけではなく、祖父との残り少ないかけがえのない時間も作ってくれた、忘れられない振袖の思い出です。